絵絹の表現美:木枠の張り込みとドーサ引き

絵絹の表現美:木枠の張り込みとドーサ引き

 

日本の美術史において、仏画や浮世絵の肉筆画、あるいは近代日本画の名作の数々は、絵絹(えぎぬ)という特有の素材の上に描かれることで、他にはない奥深い美しさを放っています。 
絵画の基底材として古くから絹が使われてきた日本では、その優美な質感に加え、特性を生かした独自の表現技法も発展してきました。絵絹のポテンシャルを最大限に引き出し、美しい作品として形にするためには、適切な下準備の知識が不可欠です。

本記事では、絵絹ならではの魅力や表現技法を紐解くとともに、制作に欠かせない「木枠への張りこみ」や「ドーサ引き」といった基本工程を詳しく解説します。さらに、これらを実技と講義で深く学べる体験型ワークショップの概要までまとめてご紹介します。
これから絵絹での制作を始めたい方だけでなく、pigment.momのワークショップを受講される方の予習・復習にもぜひご活用ください。

 

 

目次

1. 絵絹を知る:特性と表現の魅力
  美しさを宿す素材の構造
  魅力を際立たせる絵画技法
2. 描画前の下地づくりと役割
  木枠への張り込み
  湯引き(繊維の収縮と不純物除去)
  ドーサ引き(にじみ止め加工)
3. 絵絹を木枠に張り込む
  木枠に張り込む方法と手順
4. ドーサ液の作成と濃度計算
  材料と作り方
  濃度の計算方法と分量(希釈計算・分量表)
5. 絹にドーサ引きをする
  ドーサ引きの手順
6. 体験で深く学ぶ:pigment.mom ワークショップ






1. 絵絹を知る:特性と表現の魅力


「絵絹」とは、描画用として繊細な絹糸で織られた布地を指します。
和紙の持つ温かみや力強さとは対照的に、その大きな魅力は「上品な光沢」と「しなやかで透明感のある緻密な絵肌」にあります。まずは、ミクロの視点から絹の構造を紐解き、絵絹が持つ美しさの秘密に迫ります。




美しさを宿す素材の構造


視覚美:光沢と半透明の秘密

蚕(かいこ)の繭から紡がれた動物性の糸を用い、精練*されていない生糸(きいと)のまま織り上げた「生絹(きぎぬ)」と呼ばれる布地です。
シルクの真珠のような艶と光沢は、絹糸の中心にあるタンパク質「フィブロイン」の形状に由来します。
断面がきれいな三角形をしたフィブロインに光が当たると、ガラスのプリズムのように内部で屈折と反射を繰り返します。この微細な構造によって柔らかな光が多方向に放たれ、まるで真珠のような深い輝きが生み出されます。さらに、この光の乱反射と繊細な織目が合わさることで透明感が表れます。
何も描かれていない余白の部分でさえ、光の角度によって輝いて見えるのは、このプリズム効果によるものです。

 

*精練(せいれん):織物にする前に、糸の硬い成分や余分な汚れをアルカリ等で洗い落とす工程のこと。



筆触美:「張り」と緻密な絵肌

衣類などの絹製品の柔らかさとは異なり、使用前の絵絹にはパリッとした適度な「張り」があります。この違いは、糸の加工工程である「精練」の度合いによるものです。

一般的な絹製品は、精練によって糊状のタンパク質「セリシン」を取り除いた「練糸(ねりいと)」で織られます。一方の絵絹は、セリシンを残した「生糸」で織り上げられます。
セリシンを残すことで織り目を均一に保ちながら、保管時の型崩れを防ぐことができます。この均一に織られた生地を木枠に張り込むことで、筆の圧力をしっかりと受け止める画面が整います。この適度な張りと、極細の糸が織りなす滑らかな絵肌が融合することで、絹ならではの筆運びと描き心地を作り出しているのです。




魅力を際立たせる絵画技法


下の色を微かに写す透明感と、フラットできめ細やかな絵肌。その風合いを際立たせることで、絵絹は独自の表現や伝統的な絵画技法を可能にしています。



色彩美:発色とぼかし・グラデーション


緻密な絵肌の上では、絵具がより鮮やかに、みずみずしく発色します。また、織り目に沿って絵具がすっと滑らかに馴染むので、ぼかしやグラデーションの描写にも適しています。



透過美:裏彩色・裏箔


表からのアプローチだけでは表現しきれない、幽玄で奥行きのある空間を演出する技法です。裏面への着彩や施箔が絹を通り、画面の表層へと色彩や光を透過させます。

pigment.momでは、3種類の厚さの国産絵絹を取り揃えておりますが、最も薄手の「絵絹 二丁樋特上」をお使いいただくと、その高い透過性を最大限に生かすことができます。

 

 

▪️裏彩色(うらざいしき)

表面から見た裏彩色の効果比較
左:表面の彩色のみを行った状態/右:裏彩色をした状態
 
【使用画材】
顔料:水干  鶸色緑青(表面)
   水干  牡丹(裏面)
展色剤 牛膠溶液 直火濃縮20%
基底材 絵絹 二丁樋特上

 


画面の背面(裏側)にも絵具を塗る伝統技法です。 裏面に配した色が表側の彩色にもほんのりと透け、深みのある重層的なトーンを生み出します。
表側から同じ絵具を重ねた場合であっても、裏彩色の有無や背面の色彩によって、画面が見せる発色や空間の表情が豊かに変化します。


【関連記事】裏彩色の詳しい解説や効果について

 PIGMENT ARTICLES
ワークショップ[入門]絵絹に果物をえがく[裏彩色]


 

 

▪️裏箔(うらはく)

@Margarita Serizawa
《Plitvice(部分)》芹澤マルガリータ

表面から見た裏箔の効果
【使用画材】岩絵具 膠 アルミ箔 彩墨 絵絹 楮紙(裏打ち)



画面の裏側から金属箔を施す技法です。表から箔を貼った場合は光が直接当たるため力強い輝きとなりますが、裏箔にすることで絹地が光を和らげ、繊細な表情へと変化します。
絵絹の細密な織り目から箔の光が透け、画面の奥から立ち上るような、幻想的な輝きを引き出します。


色材やメディウムと、絵絹との相性は種類により異なります。
表現の他にも、定着性や保存性と併せてお選びください。

 

【関連記事】

絵絹の特徴/作品の仕立て(掛軸や額装)と作風に応じた描画材の選び方



 

 

 



2. 描画前の下地づくりと役割


絵絹には優れた質感や美しさがある反面、水分の影響を非常に受けやすい性質があります。そのため、適切な下準備をせずに描き始めると、水によって激しく縮んだり、絵具が際限なく滲んだりしてしまいます。

素材の真価を発揮させ、思い通りの描写を行うために、「木枠への張り込み」「湯引き」「ドーサ引き」という3つの工程をおすすめしています。




木枠への張り込み


制作にあたっては、まず木枠やパネルへ絵絹を張り込みます。
この工程は画面の歪みを防ぐだけでなく、「透過性」を生かした技法の土台を築く重要な役割を果たします。

背面が宙に浮くことで「裏彩色」や「裏箔」が可能となり、適度なピンと張られた画面によって、滑らかなグラデーションや繊細なぼかしも容易になります。

参照:絵絹を木枠に張り込む




湯引き(繊維の収縮と不純物除去)


デリケートな絹本を安定して保存するには、完成後に「裏打ち」をする必要があります。制作前に熱湯を刷毛で塗布し、あらかじめ絹糸を十分に縮ませておくことで、裏打ち時の伸縮や歪みを抑えられます。
また、絹糸に残る油脂分やセリシンを熱湯で変性・除去し、ドーサや絵具の弾きを防ぐ役割もあります。タンパク質であるセリシンは80℃以上で熱変性を起こして水に溶け出すため、作業の際は90℃前後のお湯をご用意ください。


【関連記事】絹本の裏打ちについて




ドーサ引き(にじみ止め加工)


「ドーサ引き」とは、絵具の不要なにじみを防ぎ、定着を高めるための下処理のことです。発色や仕上がり、さらには長期保存性にも大きく関わる大切な工程です。

生絹は水分を急速に吸収するため、そのまま描画すると線や色が滲んでしまいます。そこで、膠と水を主体としたドーサ液を全面に塗布し、繊維の表面に透明な皮膜を作ります。これにより狙い通りの線描や着彩が可能になるだけでなく、水分を含んだ絵絹が乾燥する過程で、織り目や表面の張りが均一に整う効果もあります。

生絹の滲む性質を利用したい場合には、固形墨に限りドーサ引きを省略できます。

参照:[絹にドーサ引きをする


 

 

 

 


 

3. 絵絹を木枠に張り込む

 

使用画材・道具

 

左:木枠/絵絹
右:でんぷん糊/プラスチック製ヘラ/画鋲/はさみ/ペーパーパレット

 

絵絹
・サイズ:引っ張りながら固定する作業を行うため、木枠の外枠よりも一回り大きく裁断します。
(※実際の描画面は、木枠の「内側のサイズ」になりますので、裁断サイズにご注意ください)
・表裏の確認:巻いてある内側を表(描画面)として配置してください。 
・配置する方向(画面の向き):描画後の仕立て方に応じて、生地を配置する向きをご確認ください。
・生地の向き: 軸装に仕立てる場合は「経糸(たていと)を上下」に設定することで、軸装に仕立てる作業がスムーズに行えます。

 

[生地の方向と特徴]

・経糸(たていと):裁断面がある方向です。巻き癖があり、くるりと丸まりやすい性質を持っています。

・緯糸(よこいと):左右の端に目が詰まっている「耳」があり、経糸に比べて丸まりにくいのが特徴です。

・耳の下処理:「耳」はそのまま張ると引きつれや歪みの原因になります。耳に等間隔で切り込みを入れるか、あらかじめ切り落としてから張り込みを行いましょう。

 

【関連記事】耳の切り込み方法

 PIGMENT ARTICLES   絵絹のディティール[張りこみ]

 

 

木枠:糊の接着が可能な木製のキャンバス枠や絹枠などをご用意ください。

※実際の描画面は枠の「内側のサイズ」です。

 

固糊またはでんぷん糊:作品の長期保存の観点から、生麩糊を炊いた「固糊(かたのり)」または市販のでんぷん糊(障子糊など)をお使いください。

※本記事ではでんぷん糊を使用しています。

※アクリル等の化学的接着成分が入っている合成糊は、速乾性による張り込み時の歪みや、接着力が強いため画面の破損に繋がる可能性があります。

 

【関連記事】固糊の作り方

 PIGMENT ARTICLES 裏打ちの所作 -輪郭[固糊/絹本用]

 

 

ハサミ:切れ味のよいもの(粘着テープなどを切っていない清潔なハサミ)をご用意ください。

 

画鋲(がびょう):張り込み後、乾燥中に絵絹が収縮して動かないよう固定するために使用します。
目安:F3木枠(273×220mm)で50個程度

 

ヘラ(または糊刷毛):木枠に糊を塗る際に使用します。プラスチックヘラは適量の糊を塗りやすく、後片付けも簡単なため便利です。刷毛を使う場合は、細かい作業に適した「付け廻し刷毛」が向いています。

 

ペーパーパレットやアクリル板:でんぷん糊を適度な硬さに練る時に使います。

 

 

木枠に張り込む方法と手順

 

こちらでは、基本的なやり方の一例としてご紹介いたします。以下の解説動画と手順を併せて参考にしてください。

 

【動画】絹をはる方法

 

 

 

張り込みのステップ(手順1〜6)

 

1. 木枠に「捨て糊」を付ける(1回目)

木枠の平らな面(キャンバス枠の場合は裏面)に糊を付けます。ヘラや糊刷毛で薄く伸ばし、一度乾燥させます。

枠の内側から数mm〜1cmほど空けて、四辺に糊を付けます。内枠付近に余白を設けることで、ドーサ引きや着彩時の水分で糊が溶け出すのを防ぎます。

 

・捨て糊(すてのり)
新しい木枠は糊を吸い込んでしまうため、あらかじめ糊を塗って接着力を高める下処理です。過去に使用したことのある木枠であればこの工程は省いてください。

 

 

2. 木枠に糊を付ける(2回目/絵絹接着用)

捨て糊が程よく乾いたら、1回目と同様に内側を空けて糊を付けます。この糊が絵絹を固定するため、作業中に乾いてしまった箇所があれば再度糊を付けてください。

 

 

 

3. 絵絹を木枠の上に置く

糊が乾かないうちに、素早く絵絹を木枠の上に置きます。
木枠に対して垂直・平行になるよう意識し、巻いてある方向に沿って静かに広げます。絹の端が木枠から均一に少しはみ出る位置にセットすると、この後の作業がしやすくなります。

 

 

 

4. 絵絹の上から糊を重ねる

木枠に重なっている絵絹の上から、さらに重ねて糊を塗ります。
ここでも内側数ミリは空けておきます。ヘラや指先を使って内側から外側へ空気を押し出すように、全辺を木枠へしっかりと密着させます。

 

 

 

5. 画鋲で固定する

手で絵絹を適度に引っ張り、シワを伸ばしながら画鋲を打っていきます。画鋲を打つことで、乾燥中のズレを防ぎ、ピンと張った状態を維持できます。

始めに四隅や四辺の上下左右に画鋲を打ち、絹のシワやツレがあるところのテンションを調整しながら固定します。特に経糸(縦糸)方向は収縮が強いので、画鋲の密度を高くすると綺麗に仕上がります。

 

 

 

6. 乾燥/完成

画鋲を刺したまま風通しの良い場所でしっかり乾燥させます。糊が乾いたら、画鋲を外します。
乾燥の目安時間:半日以上


[固定力を強くしたい場合]
絵絹と木枠の接着面の上から太いマスキングテープや水張りテープなどを貼って補強すると、制作時の水気によって剥がれる心配がなくなるので、安心して制作できます。

 

 

 

 


 

4. ドーサ液の作成と濃度計算

 

pigment.momでは、明礬(みょうばん)を使用しないオリジナルの「豚膠溶液 20%」と「板膠 豚由来 (ドーサ向き)」膠を用いた手法を推奨しています。
酸性化に伴う和紙や絹の劣化・変色を防ぐことができるため、作品の長期保存を考慮する場合には最適です。

 

 

材料と作り方

 

「豚膠溶液 20%溶液」から作る場合

 

材料・道具

・豚膠溶液 20%溶液 :
 希釈するだけで使えるため、少量だけ手軽に使いたい方や、早く作りたい場合に便利です。

 防腐剤が添加されていますが、冷蔵保管が必要です。

・水(※pigment.momでは軟水を使用していますが、水道水でも問題ありません)

・調合用の容器(ステンレスやガラス製などの清潔で混ぜやすいもの)

・湯煎用の容器と熱湯

・攪拌棒(かくはんぼう):ガラス棒やスプーンなど

 

ドーサ液を作る手順

1. 「豚膠溶液 20%」の容器ごと湯煎にかけ、完全に溶解させます。
2. 膠溶液と水を計量して容器に入れます。全体の濃度が均一になるよう、よく攪拌します。

 

 


「板膠 豚由来 (ドーサ向き)」から作る場合

 

大作の制作などで、一度にまとまった量を仕込む際に向いています。ご自身で膨潤・溶解させる必要があるので、ドーサを作るのに時間がかかりますが、乾燥状態であれば常温で長期保存できます。なお、高温多湿の環境下では乾燥剤を入れて保管してください。

 

【関連記事】固形の「板膠 豚由来」からドーサを作成する方法

 

 

 


濃度の計算方法と分量(希釈計算・分量表)

 

ドーサ液は気温や湿度、絵絹や紙の厚みにより、効き方が変わります。濃度数値を目安に、使用する環境下やご自身の表現に合わせてお試しの上、ご調整ください。

 

◾️絵絹に適した濃度:1.5〜2%

 

「豚膠溶液 20%溶液」の希釈計算

例:出来上がりの全体量(ml)を決めている場合

 豚膠20%溶液の量 (g) = 完成量 (ml) x 希釈率 { 指定の濃度 (%) ÷ 豚膠溶液 20 (%) }
加える水の量 (ml) = 完成量 (ml) - 豚膠20%溶液の量 (g)

 


例:完成量 100mlで 2% のドーサ液を作る場合
・希釈率 2% ÷ 20% = 0.1(2%は20%の10分の1の濃さ)
・20%溶液の量 完成量 100ml  × 0.1 = 10 g
・加える水の量 完成量 100ml − 10g = 90 ml

 

出来上がり「100ml」を作る場合の分量表

目的の濃度

豚膠20%溶液

加える水の量

1.5%

7.5 g (ml)

92.5  ml

2.0%

10 g (ml)

90 ml

3.0%

15 g (ml)

85 ml

 

 

「板膠 豚由来 (ドーサ向き)」の計算

 基本の計算式(慣行計算) 水の量 (ml) × 濃度 (%) =膠の量(g)

 

例:水 100mlで濃度1.5%のドーサ溶液を作る時の「膠の分量」
100 × 1.5% = 1.5g (「濃度 %」は数値に換算 1.5% ÷ 100 = 0.015)

 

 

 

 


 

5. 絹にドーサ引きをする

 

 

使用画材・道具


・刷毛
・ドーサ液(ボウルなど刷毛が入る容器に入れると作業がしやすくなります)

 

刷毛の特徴と選び方

絹は和紙ほど水分を急激に吸い込まないため、液を多く含みすぎない穂(毛)の薄い刷毛が向いています。適度な液量で均一に塗り広げやすく、画面のサイズに合った幅を選ぶことで、手早くきれいに仕上げることができます。
素材の特徴として、羊毛(ヤギ)は毛質が柔らかく水含みに優れ、ナイロン毛は耐久性が高くお手入れしやすい魅力がありますので、お好みの刷毛をお選びください。

 

 

絵絹のドーサ引きに適した刷毛の比較

※取扱商品は2026年8月時点の情報です。

商品名

穂(毛)の特徴:毛質・厚さ

サイズ展開

絵刷毛

材質:羊毛(腹毛)

厚さ:程よい厚さ(白髯刷毛と同等)

5 〜100号

白髯刷毛

材質:羊毛(髯/腹毛よりもコシがある)

厚さ:程よい厚さ(絵刷毛と同等)

10〜100号


極品ドーサ刷毛

材質:羊毛(髯)と白ナイロン毛の混毛

厚さ:通常のドーサ刷毛より薄口ながら比較4種の中では最も厚口

30・40・50号

薄口ジェッソブラシ

材質:ナイロン

厚さ:薄口

5〜100号

 

 

 

ドーサ引きの手順

 

1. ドーサ液の溶解

膠を含んだドーサ液は、冷えるとゼリー状に固まり、温めると液状になります。ボトルごと湯煎して完全に溶解させてから、使用する分量をボウルなどの清潔な容器に移します。30℃前後まで冷ましてから使用します。
※ゼリー状に固まってしまった場合は再び湯煎してください。

 

 

2. 塗布

描画面(木枠の内側部分)の表面に、ドーサ液を塗布します。
刷毛にドーサ液をたっぷりと含ませて、刷毛目や塗りムラ、塗り残しができないよう、端から一定のスピードでゆっくり引いてください。絹の繊維へ液がしっかりと浸透するように行います。

通常は表面のみの塗布で問題ありませんが、裏彩色の技法をしっかりと施す場合は、裏面にも塗布しておきます。裏面のにじみが抑えられ、意図通りの美しい透過表現ができます。
糊で絵絹を固定した木枠の部分に水気がかからないよう、気をつけて作業を進めてください。

 

 

 

左:ドーサ液 塗布前/右:塗布後

 

3. 乾燥

十分に乾燥させれば描画が可能です。
にじみ止め効果を強くしたい場合は、濃度の調整や乾燥後に2層、3層と重ね塗りを行ってください。


木枠から外す際の取り扱い
制作終了後、木枠から剥がすか、内枠に沿ってカッター等で切り取ります。
剥がす際に生地を強く丸めたり折ったりすると、画面の破損だけでなく絵具や箔の剥離に繋がりますので丁寧にお取り扱いください。

 

 

 

 

 


 

6. 体験で深く学ぶ:pigment.mom ワークショップ

 

pigment.momでは、絵絹の基礎的な下準備から、絹本彩色や裏彩色といった伝統技法までを専門講師から学べるワークショップを開催しています。
講師による実演と実技を通じ、作業の細かなコツや留意点、素材に関する知識を多角的に深めていただけます。
絵絹での制作が初めての方はもちろん、独学での技法を確実なものにしたい方、体系的な経験を通して、より専門的な見識を得たい方にもおすすめです。

 

 

 

[入門]絵絹の下ごしらえ

 

初めての方にも扱いやすいサイズと厳選した道具を使い、絵絹制作の基本となる「木枠への張り込み」「ドーサ引き」を体験します。
下準備に関わる実技にとどまらず、絵絹ならではの技法や描画時のポイント、さらには作品の長期保存に適した仕立て方まで、デモンストレーションや資料を交えて丁寧に解説いたします。
ご自身でドーサ引きまで仕上げた絵絹は、木枠に張った状態のままお持ち帰りいただけますので、ご自宅での制作にもすぐにお役立ていただけます。

 

[入門]絵絹の下ごしらえ(170分/休憩除く)


講座概要

開催日程/ご予約 こちらをご覧ください。ワークショップ-絵絹

 <TENNOZ ART WEEK 2026 特別企画>
  [入門]絵絹の下ごしらえ(英語通訳あり) 26/09/12
  [入門]絵絹の下ごしらえ 26/09/13

時間 11:10 – 16:00
  11:10 – 12:00(50分)  午前の部
  12:00 – 14:00(120分)お昼休憩 
  14:00 – 16:00(120分)午後の部 

 

会場 「pigment.mom」または「G1-1F」
 ▪️pigment.mom(11:00よりご入店いただけます)
  店内でのお食事はご遠慮いただいております。ご昼食は近隣店舗をご利用ください。(周辺マップ
 ▪️G1-1F(10:50よりお入りいただけます)
  会場となるお部屋でご飲食いただけます。
  カップ麺など匂いの強いものはご遠慮ください(お弁当は問題ございません)。
  近隣に飲食店やコンビニもございます。上記の「周辺マップ」をご参照ください。

受講料  ¥9,900(税込・材料費込)
対象年齢 10歳以上
  ※保護者同伴の場合は、オプション(無料)を併せてお申し込みください。
持ち物 なし(木枠が入る手提げの紙袋をご用意しています)

 

※講座内では「ドーサ引き」の工程において、動物性の膠を使用します。(技法の特性上、代替品のご用意はございません。)

 

 

使用する画材

使用する絵絹は、裏彩色や裏箔による半透明の美を表現しやすい「絵絹 二丁樋特上」です。
ドーサ引き用の刷毛には、絵絹への塗布にも適し、初めて扱う方でも作業やお手入れがしやすいナイロン毛の「薄口ジェッソブラシ」をご用意しています。

 

[タイムスケジュール]

11:10 – 12:00 午前の部(50分)

▪️絵絹の張り込みの実技
F4号(333×242mm)の木枠を使用します。
プラスチック製のヘラと、でんぷん糊で張り込みを体験します。(制作したものを当日お持ち帰りいただけるように、本記事に記載された工程とは異なる手順で行います)
 参照 [絵絹を木枠に張り込む


12:00 – 14:00 お昼休憩(120分)
▪️休憩/乾燥
絵絹と糊の乾燥を兼ねて、休憩をお取りいただきます。
気になる画材のお買い物をしたり、周辺のアート施設で美術鑑賞をしたり、自由に時間をお過ごしください。
天王洲アイルのアートイベント情報は「天王洲アートポータルサイト」をご覧ください。

 

14:00 – 16:00 午後の部(120分)
▪️ドーサ引きの実技
講師がドーサ液を作りながら、濃度やその効果について説明いたします。(ドーサ液を調合する実技はありません)
 参照 [絹にドーサ引きする手順

▪️座学・質疑応答(乾燥時間)
ドーサの乾燥を待つ時間を活用し、参考作品をご覧いただきながら絵絹の多彩な表現技法を解説します。また、普段の制作に関する疑問や技術的な質問にもお答えしますので、ぜひこの機会にお気軽にご相談ください。

 

 

 


 

[TENNOZ ART WEEK 2026]絵絹に花をえがく

 

絵絹に花をえがく(180分)

 

<TENNOZ ART WEEK 2026 特別企画>

木の樹脂から作られる黄色「藤黄(とうおう)」や、サボテンに生息するカイガラムシから得られる赤「コチニール」など、古くより親しまれてきた天然由来の顔料・染料を用いて作品を仕上げる講座です。
また、あらかじめ下絵を施したF4サイズの木枠に張り込んだ絵絹をご用意しています。画面の表裏から色を重ねる「裏彩色」により、深い奥行きと繊細なグラデーションを表現していただけます。
江戸時代の絵師の感性に触れる特別な手仕事を、ぜひお楽しみください。

 

<ワークショップの進行言語>
ご希望の言語の日程をご確認のうえ、ご予約ください。
・9/11(金) [英語]絵絹に花をえがく 26/09/11

  ※英語を理解できる国内の方もご参加いただけます

・9/12(土) [日本語]絵絹に花をえがく 26/09/12
・9/13(日) [日本語]絵絹に花をえがく 26/09/13

 

 

 

 


 

[入門]絵絹に果物をえがく

 

絵絹の描画法である「絹本彩色(けんぽんさいしき)」の基礎について、下図から絵具の調合、彩色、裏彩色まで、一連の制作プロセスを体系的に学びます。
伝統的な画材を引き立てる風雅な発色と透過の美を体感しながら、初めて絵絹を使う方でも安心して創作の喜びに触れられる内容です。

 

[入門]絵絹に果物をえがく(120分)

 

講座概要

開催日程/ご予約 ワークショップ-絵絹
時間   14:00 – 16:00
受講料  ¥8,800(税込・材料費込)
対象年齢 10歳以上
 ※保護者同伴の場合は、オプション(無料)を併せてお申し込みください。
持ち物 なし(制作した作品を入れる手提げの紙袋をご用意しています)

※絵柄は、予約ページに掲載されているデザインを使用します。
※講座内では、動物性の接着剤である膠を使用します。代替品としてアラビアゴム(樹液)をご用意しておりますので、ご希望の方は講師へお声がけください。

 

 

詳細はこちら

 

 

 

 

 

 

pigment.momのワークショップ(通年開催・特別企画)

 ワークショップ - pigment.mom

 

 

プライベートワークショップの基本情報(個人・法人・団体)

 

 

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参考資料

農研機構
・バイテク用語集「絹糸腺」https://www.naro.go.jp/laboratory/nias/gmo/handbook/app/ka.html (参照 2026-07-24)
・カイコのひみつ ~第2弾 新素材・新産業編~ https://www.naro.go.jp/publicity_report/season/166829.html(参照 2026-07-24)

東京都クリーニング生活衛生同業組合
・誰もが憧れる素材 シルク(絹)について https://www.tokyo929.or.jp/column/fiber/post_158.php(参照 2026-07-24)

 

 

 

白石 奈都子

編集・執筆者

白石 奈都子

多摩美術大学 染織デザイン専攻卒業。オリジナルの和紙、書を主体とした制作に携わり、アーティストとして活動中。

好きなマチエール:紙 躍動感のある木の繊維

多摩美術大学 染織デザイン専攻卒業。オリジナルの和紙、書を主体とした制作に携わり、アーティストとして活動中。

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pigment.mom

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PIGMENT ARTICLESでは、アートに関する多彩な情報をお届けしています。伝統的な技法や画材、最新のアイテムに加え、ワークショップやイベントの情報も幅広くご紹介しています。創作のインスピレーションや知識を深める機会に、ぜひご覧ください。

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